第22回全日本居合道・全国大会(その5)

 

 

居合道を

 

「弓と禅」を書いた

オイゲン・ヘリゲル氏の

言葉を借りて言うならば、

 

それは

「神秘的修練であり、

 

したがって居合道は、

日本刀を持って外的に何事かを

行おうとするのではなく、

 

自分自身を相手にして内的に

何事かを果たそうとする

意味をもっている。

 

それゆえ、

日本刀はかならずしも

日本刀を必要としない ある事の、

いわば仮託に過ぎない。

 

目的に至る道であって、

目的そのものではない。

 

 

この道の通じるべき目的そのものは、

簡単に言ってしまえば、

 

神秘的合一

というところだろうか。

 

 

長年、

拳銃の射撃を稽古したことが

弓術の稽古にも役に立つと思い

オイゲン・ヘリゲル氏は

弓術を習おうとした。

 

ところが彼は、師匠に

「的にあてることを考えるな、

ただ弓を引き

矢が離れるのを待って射あてるのだ」

と言われ、当惑してしまう。

 

そして、5年間研鑽を積み、

西欧の徹底した合理的・倫理的な

精神が

 

いかに日本の

非合理的・直感的な思考に

接近できるかを弓道を通じて

体験しようとした。

 

現在でも

多くの外国人が様々な

武道を習う姿を見るように

 

ヘリゲル氏もまた

自分とは何か?を

追い求めたのだろう。

 

やはり

日本人も外国人も関係なく

世界共通で

武士が求め続けた精神を

人は求めているのではないだろうか?

 

 

また、

数世代以来

ようやく戦時用としては

 

近代的武器が古来の武器を

駆逐したことは事実である。

 

スマートフォンに進化した

通信機器を今さら

ポケベルや、大型の携帯電話に

戻ろうとする人がいないように

武器も進化を遂げてきた。

 

しかし、世界で唯一

それと逆行した民族がいる。

 

それが

日本人である。

 

16世紀後半の日本は、

非西欧圏で唯一、

鉄砲の大量生産に成功し、

西欧のいかなる国にもまさる

鉄砲使用国となった。

 

にもかかわらず

戦国時代から

江戸時代になると日本人は

鉄砲を捨てて

また、刀剣の世界に戻るという

武器の歴史において

起るべからざることが起こった。

 

それは、私達が現在

居合道を行う精神と同じものだろう。

 

 

平和のための居合道と

御宗家がおっしゃるように

 

この日本においては

古来の日本刀に親しむ風が

絶えたわけではなく、

それはさらに普及して、その後、

ますます広い範囲に行われている。

 

しかし、日本人は剣の道を

一種のスポーツとして

解しているのではなく、

 

徹頭徹尾、

精神的な経過と考えている。

 

したがって日本人の考え方によれば

ここでの斬る「術」とは、

 

主として

肉体的な修練によって誰でも

多少は会得する能力、

 

たとえば

弓道の世界で言うところの

「中たり矢」が

その標準と考えられる能力ではなく、

 

それとは別の、純粋に精神的な

鍛錬に起源が求められ、

 

射手(いて)は実は

「自分自身」を的にし、

かつ その際おそらく自分自身を

射中てるに至るような

精神的な的中に

目的が存在する能力を意味している。

 

 

この居合道や弓道が持つ

特有の精神は

 

戦国時代や幕末の

血なまぐさい対決に役立つものと

考える必要がなくなって以来、

いっそう明白になって来たと

オイゲン・ヘリゲル氏が言うように

 

この精神が後にこじつけたものではなく、

昔から居合道に結びついていた。

 

江戸時代に武士が

鉄砲を捨てたように・・・

 

 

私達が高段者の先生達の

御演武を見て、美しいと感じるのは

 

敵との対決の

実質上の真の根底である

自分自身との対決という

 

精神的な深い根底まで

還元されているところが

「芸術」と見えるものなのでは

ないだろうか?

 

 

 

高段者の先生達の御演武は美しい。

 

それは、

いつも九州地区連盟会長の

岩田先生がおっしゃる

「居合道は芸術である」ことと

通じると思う。

 

 

 

全国大会の楽しみは

このような芸術と言える

居合道に出会えることだと

つくづく思った。

 

あらためて、

多くの先生方に感謝いたします。

 

 

資料:日本の弓術 オイゲン・ヘリゲル述 柴田治三郎訳 岩波文庫

鉄砲を捨てた日本人 ノエル・ペリン 川勝平太訳 中公文庫

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1 Comment »

 
  • 平四朗吉政 より:

    現代の武士の方々のお姿を拝見致しまして、感動いたしました。

 

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